「バンド・デシネは運動不そく??」バンド・デシネにおけるスポーツ

「東京オリンピックまで2年をキリました」…と言うフレーズをあちらこちらで聞かれる様になってきた今日この頃…。今回のAIDE新聞はフランス生まれのフレッドにBD(バンドデシネ)に於けるスポーツについて報告してもらいました。

フレデリック・トゥルモンド (Frédéric Toutlemonde)
1978 年パリ郊外リラ生まれ。パリ第7 大学日本言語文化学科卒。学生時代にスペインとキューバを繰り返し訪問。 1999 年
に初めて日本を訪れ、2003 年より日本で暮らす。2014 年まで在日フランス大使館に勤務した。2008 年にEuromanga 合同会社設立、バンド・デシネを専門にしたマンガ誌『 Euromanga』誌の出版を始める。2014年5月にユマノイド日本支社設立、代表に就任。2012年から海外マンガ フェスタの実行委員会委員長を務めている。
 
 
 
1980年代半ば、僕が8歳のときにフランスで『キャプテン翼』のアニメの放送が始まりました。当時はいろんなチャンネルで、日本のアニメが放送されていました。
『UFOロボグレンダイザー』に『キャプテンハーロック』に『コブラ』……。あの頃、僕らのヒーローは宇宙を股にかけた正義の味方やロボットでした。要するにメイド・イン・ジャパンの空想的なキャラクターたちです。そこに翼くんがさっそうと登場しました。放送が数回終わった頃には、子供たちは翼くんのシュートやテクニックや哲学(「ボールは友達」!)の話で持ち切り。
学校の休み時間になると、校庭で自然とサッカーが始まります。それまで子供たちの憧れは、フランスが生んだ大スター、ミシェル・プラティニでした。ところが今や話題の中心はオリヴィエ・アトン(大空翼のフランス名)やトマ・プライス(若林源三)、マーク・ランダース(日向小次郎)になったのです。
放送開始から1年が経つ頃には、『キャプテン翼』の影響でフランス中の少年サッカークラブの定員が2、3倍に増えるまでになりました。かく言う僕もその頃サッカーを始めたクチです。それからほどなくして、今度はバレーボール・アニメの旋風がフランス中に吹き荒れます。子供たちは競ってバレーボールをし始めました。こんなふうにスポーツアニメはフランスで大人気だったのです。
おそらく日本でも、これらのアニメや『スラムダンク』などがものすごい影響力を持っていたことでしょう。中にはアニメを通じて有名になったスポーツもあるのかもしれませんね。もちろんアニメに限った話ではありません。スポーツはマンガでもたくさん描かれています。アニメもマンガもアクションの時間を上手にコントロールし、いろんなエピソードをどんどんつむぎ、
スポーツの魅力を何倍にもして伝えます。僕はマンガの専門家ではありませんが、スポーツマンガが重要だといことは、大手の少年マンガ誌におけるスポーツマンガの割合を見れば一目瞭然です。スポーツマンガはマンガ産業の柱のひとつとすら言えそうです。

日本のスポーツマンガのすごさはきっと皆さんよくご存じでしょう。フランス人の僕がわざわざ説明するまでもありません。それでは海外のスポーツマンガ事情はどうなのでしょう?
アメリカのコミックスについては、スーパーヒーローが優勢ということもあり、スポーツのテーマを扱った作品は決して多くはないようです。それでも、野球、アメリカンフットボール、
バスケットボールなどを描いた写実的なコミックスがいくつか見受けられます。かつてはスポーツを扱ったコミックスがもてはやされていた時期もありました。1950年代にはマーベルから『Sports Action(スポーツ・アクション)』という雑誌が出版されていま
す。それらはしばしばとても写実的なスタイルで描かれていて、有名な選手やチームに焦点を当てたものでした。対照的にフランス語圏のマンガ“バンド・デシネ”(以下、BDと略します)の状況は、もう少し多様です。以下に詳しくご紹介することにしましょう。そもそもBDが日本では決して広く知られていませんし、マンガファンの中でBDにまで手を伸ばしている人は稀なはず。そんな状況でスポーツBDを紹介するのはあまりにマニアックだと思われてしまうかもしれませんが、日仏のマンガとBDの文化の違いに焦点を当てるという意味では面白い試みでしょう。それぞれの文化でスポーツは何を期待されているのでしょうか。
BDでスポーツを描くのは決して簡単なことではありません。日本のマンガとは異なり、BDの定型的なフォーマットはA4判よりやや大きい“アルバム”と呼ばれるもので、ページ数は50ページほど、
中は白黒ではなくオールカラーです。これだけ少ないページ数で物語をおもしろく語るためには、1ページに情報がたっぷり詰まったコマをたくさん配置する必要があります。このような条件で運動やアクションを長々と展開するのは非常に難
しいことです。したがって、BDでは、アクションを延々と描写することはせずに、要約的に最初と最後だけ見せる傾向があります。これは極めてBD的な表現方法
で、日本のマンガとは大きく異なります。そもそもの性質からして、BDは好んでスポーツの場面を描いたり、スポーツそのものを主役にするのに向いていないのです。だからと言って、BDの中にスポーツが出てこないわけで
はありません。なぜなら、まず第一にたいていのBDは作者が住む現実を反映していますが、あらゆるフランス人がそうであるように、BDの作者もまた概してスポーツ好きだからです。作者はスポーツのシーンを描きたいのです。また、そのBDがアクションに乏しい作品である場合、スポーツのシーンがアクションとしていい味付けになるということもあります。BDの中で独創的なスポーツ
が描かれることもあります。日本で翻訳出版されたBDでは、エンキ・ビラルが『モンスター』の中で近未来のサッカーを描いています。それはサッカーはサッカーでも、ボールが2つあり、ゴールキーパーがふたりいるサッカー
なのです! あるいはバスティアン・ヴィヴェス、バラック、ミカエル・サンラヴィルの『ラストマン』では、ふたり一組のチームで行われる格闘技が描かれています。とはいえ、スポーツは必ずしもいつもBDの中で逸話的に扱われているだけではありません。スポーツそのものを描いたシリーズもののBDが実はたくさん存在しているのです。先ほど少し触れたアメリカのコミックスのように、あるスポーツ選手に焦点を当てた写実的なスタイルの作品だってあります。例えば、『Eric Castel(エリック・カステル)』という作品。これは1970年代から80年代を舞台にFCバルセロナのあるサッカー選手のキャリアを描いたシリアスな長編シリーズです。もっとも、これはかなり例外的な作品で、スポーツBDはユーモラスな作品であることが多いようです。あるスポーツチームの日常が描かれ、喜劇的なシーンや突飛な状況が散りばめられるといった感じでしょうか。こうしたBDの人気作に『Les Rugbymen(ラグビーメン)』がありますが、この作品では、ラグビーをしているシーンはほとんど重要ではありません。主人公のチームが勝つにしろ負けるにしろ、特にサスペンスの要素はないのです。多くの場合、主人公のチームは試合に負けますが、それも負けたほうが物語上面白いから負けるといった具合です。重要なのは、そのスポーツにふさわしい滑稽なギャグをどうやって生み出すかということです。

同じスポーツをしている人なら似たような状況に陥ることもあるでしょう。読者は自分が陥りがちな状況を作品の中に見出して、楽しむことができます。スポーツをしている間はそのスポーツにのめり込み、一瞬一瞬のスリルな状況を楽しむこともあるでしょう。しかし、スポーツBDを読むことは、スポーツを楽しむことと必ずしも同じではありません。読書は孤独な作業ですが、スポーツは多くの場合、友人たちとある瞬間を共有したり、笑いあったり、小競り合いをしたりすることなのだということを思い出してもいいでしょう。ラグビーには「サード・ハーフ」という言葉があります。「アフターマッチファンクション」とも呼ばれ、試合が終わったあとに、敵味方が混ざり合
い、交流するのです。勝とうが負けようが、強かろうが弱かろうが、そんなことはどうでもいい。大事なのは同じ瞬間をみんなで生きること。しばしば子供向けの軽いノリのスポーツBDは、そのことを読者に思い起こさせようとしているのです。とはいえ、スポーツに対して真剣にアプローチするBDが皆無というわけではありません。日本のある種のスポーツマンガがそうであるように、求道的に自己の超越を目指す作品だって存在しています。しかし、スポーツもののBDで重視されているのは、やはり余暇としてのスポーツであり、社交の場としてのスポーツだと言っていいでしょう。極めてフランス的なスポーツ観です。近代オリンピックの父ピエール・ド・クーベルタンの名言を思い出してみてもいいでしょう。「参加することに意義がある」というあの有名な言葉を。


●サッカー
●タイトル : Louca(ルカ)
●作 : Bruno Decquier(ブリュノ・デキエ)
●画 : Bruno Decquier(ブリュノ・デキエ)
●出版社 : Dupuis 
●巻数 : 6 
●出版年 : 2013-2018
[あらすじ] 主人公の少年ルカは落ちこぼれ。女子にももてず、自分を変えたくて仕方ない。そんな彼の前にナタンという少年が現れ、何かとアドバイスをしてくれることに。ナタンはイケメンで頭脳明晰、サッカーが上手で、おまけに冗談も面白い……。つまり、ルカにとってはまたとない理想的なコーチ。しかし、ナタンにはとんでもない秘密があった。実は彼は既に亡くなっていた……。つまり幽霊だったのだ。幽霊コーチのナタンは、はたしてルカを変えることができるのだろうか?

●サッカー
●タイトル : Eric Castel(エリック・カステル)
●作 : Raymond Reding(レイモン・レディング)
●画 :Raymond Reding(レイモン・レディング)
●出版社 : Fleurus 
●巻数 : 15 
●出版年 : 1979-1990
[あらすじ] エリック・カステルはプロのサッカー選手。FC バルセロナに移籍したところだ。チームはまもなく行われるFCケルン戦に向けて猛練習に励んでいる。
ふとした瞬間にエリックはホームシックに襲われるが、そんなときはフォッサ・デ・マールの地を訪れ、故郷を懐かしむ気持ちを紛らせようとする。彼はその場所でサッカー好きの少年たちのチー“レ・パブリートス”と出会う。少年たちはあのエリック・カステルだとも知らずに、エリックと仲良くなるのだった。エリックの目下の悩みは、チームのスター選手スタノヴィッチとうまく打ちとけられないこと。そんな折、偶然あるプレーの最中に、エリックはスタノヴィッチの脚に怪我を負わせてしまう。ショックのあまりエリックは、練習を欠席する。はたしてエリックの友人となったレ・パブリートスのメンバーは、エリックのやる気を取り戻させることができるのだろうか?

●タイトル : Head-Trick(ヘッド・トリック)
●作 :E.D.
●画 :K’Yat
●出版社 :ED Edition 
●巻数 :10 
●出版年 : 2011-2018
[あらすじ] 主人公のエドは、あらゆる高校の校長から怖れられる鋼の
ように固い頭を持つ高校生。学校嫌いの彼は、人からちょっかいを
出されると、強烈な頭突きを食らわせるのをならわしにしていた。そ
んな態度のせいで、エドは今までいくつもの高校を退学になり、学校
を転々としていた。ある日、エドはポケットに両手を突っ込み、自動
販売機を頭突きしてジュースのボトルを落とそうとしているところを、
とある老人に見初められる。老人はサッカーの元コーチだと名乗り、
エドを謎のチームにスカウトしようとする。問題はエドが、学校以上
にサッカー嫌いということだった……。どうなる、エド !?

●自転車競技
●タイトル : Le tour des géants(巨人たちのツール)
●作 : Nicolas Debon(ニコラ・ドゥボン)
●画 : Nicolas Debon(ニコラ・ドゥボン)
●出版社 : Dargaud 
●巻数 : 1 
●出版年 : 2009
[あらすじ] 1910 年7月、パリ。ある男の立ち合いのもと、夜明け前
にツール・ド・フランスの開始の合図が告げられた。男の名はアンリ・
デグランジュ。自身スポーツをたしなむ紳士にして『ロト』紙の編集長、
そしてこのツール・ド・フランスという競技の創始者である。合図を
聞いた110人の選手が、交換用のチューブラータイヤを背負い、一斉
に飛び出す。彼らは3 週間で4735㎞を走破し、ゴールであるパルク・
デ・プランス競技場に戻ってこなければならない。誰もが勝者となる
ことを夢見ている。だが、フランス一周を成し遂げて、その場に戻って
くることができたのは、半数以下の41人だった……。

●自転車競技
●タイトル : L’écureuil du Vel’ d’Hiv’
(ヴェル・ディヴ[冬期競輪場]のリス)
●作 : Lax(ラックス)
●画 : Lax(ラックス)
●出版社 : Futuropolis 
●巻数 : 1 
●出版年 :2012
[あらすじ] 物語の舞台は1940 年のパリ。主人公はサムとエディの兄弟。兄のサムはトラックレース専門の競輪選手。ヴェル・ディヴの愛称でよく知られらた冬期競輪場の花形選手で、その敏捷性からリスとあだ名され、絶大な人気を誇った。
弟のエディは左腕と左脚が麻痺したジャーナリスト。やがてパリはドイツに占領され、エディはレジスタンス活動に身を投じる……。ドイツによる占領時代、サムとエディは一心同体の兄弟愛で結ばれ、互いを思いやりながら過ごす。だが、ふたりの兄弟は運命のいたずらに翻弄されることになるのだった……

●ラグビー
●タイトル : Top 14(トップ14)
●作 : Benjamin Ferre(バンジャマン・フェール)
●画 : Gildas Le Roc’h(ギルダ・ル・ロック)
●出版社 : Soleil 
●巻数 : 5 
●出版年 : 2014-2018
[あらすじ] トップ14 とはフランスのプロラグビーリーグのこと。その各チームから最高の選手たちが選ばれ、さらにペナルティーキックの大会を勝ち抜いたラグビーファンの少年ルカが加わり、トップチームというエリートラグビーチームを結成する。
トップ14 のいいところを集めた彼らは、“ チーム・チャレンジ”の栄冠を賭けて、ヨーロッパの他のトップチームと戦う。しかも、ウィルキンソンやココット、ピカモール、テイルズといった伝説の選手たちが彼らにアドバイスを授け、
彼らを支援してくれるのだ! 才能のみならず、勇気をも併せ持ったこの少年たちは、やがてフランスラグビー界の誇りとなるだろう!

●ラグビー
●タイトル : Les rugbymen(ラグビーメン)
●作 : Beka(ベカ)
●画 : Poupard(プパール)
●出版社 : Bamboo 
●巻数 : 16 
●出版年 : 2005-2018
[あらすじ] パイヤールの村ではラグビーが何よりも大事にされている。村には円形広場がいくつかあるが、そのどれもがラグビーボールの形をしているほど!
そんな村の自慢はパイヤール・アスレチック・クラブというラグビーチーム。怖れ知らずの彼らが怖れていることがあるとすれば、それは、悪意あるイギリス人たちが地元のバー“アルバラ= ディジェオ”をサロン・ド・テ(紅茶専門の喫茶店)にしてしまうことだけ。
敵チームの拳骨が来ようが張り手が飛ぼうが、選手たちにはお構いなし! 耳がつぶれ、目が腫れ上がっても、男っぷりがあがったと喜んでいるほど……。ようこそ、ラグビーの世界へ! 選手のルピオートやラ・クアーヌ、ラネステジスト、ラ・テーニュ、ブリションらと一緒にクラブハウスに入り、ロッカールームを抜けて、スクラムを組み、サード・ハーフを楽しもう。

●ラグビー
●タイトル : Léo Passion Rugby(レオ―情熱のラグビー)
●作 : Loic Nicolof(f ロイック・ニコロフ)
●画 :Philippe Fenech(フィリップ・フェネック)
●出版社 : Soleil 
●巻数 : 3 
●出版年 :2007-2009
[あらすじ]「 僕はラグビーのチャンピオンになる!」レオは友達のデブのムースに毎日こう繰り返し話している。やがて彼らが住むグリヌヴァル= シュル=レに新しいコーチがやってきて、新しいラグビー・チームが作られる。
もちろんふたりはすぐさまチームに加入した。ふたりと一緒にチームに加わったのは、石頭のサミア、のっぽのファニー、美男のケヴィン、けんかっ早い双子のリュックとルカ、インテリのエフエックス。
彼らはライバルのトゥルシー・ランデルのチームと戦うために厳しいトレーニングを積む。レオと仲間たちは宿敵に勝利することができるのだろうか?

●テニス
●タイトル : Max Winson(マックス・ウィンソン)
●作 : Jéremie Moreau(ジェレミー・モロー)
●画 :Jéremie Moreau(ジェレミー・モロー)
●出版社 : Delcourt 
●巻数 : 3 
●出版年 : 2014-2016
[あらすじ] マックス・ウィンソンは不敗のテニスチャンピオン。人々は彼に畏敬のまなざしを送るが、実のところ彼は世間が思うような人物ではない。
彼は、幼い頃から暴君的な父親の操り人形も同然で、非人間的なトレーニングによって作り出された人間味を欠いたチャンピオンだった。父親の力が衰えたとき、ついに彼の目の前に自由の扉が開く。
しかし、それと同時に、彼は自分の存在意義を危うくする状況にさらされるのだった……。

●テニス
●タイトル : Tennis Kids(テニス・キッズ)
●作 : Ceka(セカ)
●画 : Patrice Le Sourd(パトリス・ル・スール)
●出版社 : Bamboo 
●巻数 : 2 
●出版年 :2014-2015
[あらすじ] テレビで見る限りでは、テニスはいとも簡単だ。テニス選手たちはいとも簡単にエースやスマッシュ、パッシングショットを決めてみせる……。
ところが、いざラケットを手にしてみると、その印象は見せかけに過ぎないとわかる。ボールをコートに入れることでさえ、どんなに難しいことか! ラファエル、ジュリアン、ディミトリ、クレマン、クララ、オフェリーの6 人は、そのことを自分の身をもって経験することになる。
彼らの面倒を見るグレッグ教授は、この未熟な選手たちをテニスのサイボーグに仕立てあげなければならない……。6 人のテニス・キッズは不可能を成し遂げることができるのだろうか?

●バスケットボール
●タイトル : Basket Dunk(バスケット・ダンク)
●作 : Christophe Cazenove(クリストフ・カズノーヴ)
●画 : Maurice(t モリセ)
●出版社 : Bamboo 
●巻数 : 7 
●出版年 : 2005-2010
[あらすじ] 重力の法則に反してスラムダンクを決め、長距離から3 ポイントシュートを狙う。あるいは、ジャンプボールをしてごらんよと女の子たちをコートに誘い入れ、最新流行のファッションをギャラリーに見せびらかす……。
それもこれもバスケットボールの魅力。結局、マーカスとルディ、カフィ、フレディたちはバスケットボールに目がないのだ。彼らは新しいジョーダンになるべく、日夜、クラブやストリートでバスケットボールに励む。

●柔道
●タイトル : Les aventures de Teddy Riner
(テディ・リネールの冒険)
●作 : Béka(ベカ)
●画 : Jikkô(ジッコ)
●出版社 : Dargaud 
●巻数 : 3 
●出版年 : 2016-2018
[あらすじ] 主人公のテディ・リネールは子どもたちに柔道を教えている。彼はある秘密の奥義を会得すべく日本を訪れる。「竜の怒り」と呼ばれるこの技を知っているのは、3人の年老いた柔道家だけだった。
日本旅行だからといってのんびりしている暇はない。同じ奥義を狙ってドジでマヌケな敵たちがテディの前に立ちはだかる。はたしてテディの運命やいかに?

●乗馬
●タイトル : Triple galop(トリプル・ギャロップ)
●作 : Michel Rodrigue(ミシェル・ロドリーグ)
●画 : Benoît Du Peloux(ブノワ・デュ・プルー)
●出版社 : Bamboo 
●巻数 : 14 
●出版年 : 2007-2018
[あらすじ] 乗馬クラブへようこそ。体調管理に毛並みの手入れ、森での散策……。やるべきことはたくさんある。クラブに集まる人たちはバラエティ豊か。騎手や馬たちの思いがけないエピソードを聞いたら、きっと思わず笑ってしまうはず。
いたずら好きのポニーのマスコットや美しい牝馬のブランシュ・ネージュ、足の速いラムセスなど、特徴豊かな馬たちがたくさん。馬を愛する人たちにぜひ読んでほしい作品!

●ボクシング
●タイトル : L’enragé(怒り)
●作 : Baru(バル)
●画 : Baru(バル)
●出版社 : Dupuis 
●巻数 : 2 
●出版年 : 2004-2006
[あらすじ] アントン・ウィトコウスキーは激しい怒りを抱えている。自分が今置かれている境遇に対する激しい怒り。ろくでもない郊外から抜け出したい。厳しい父親の影響力のもとから逃げ出したい。
彼はその怒りを拳に込める。彼の拳は金になる。彼自身、それを感じ、よく心得ていた。周囲の人間も同じことを彼に語る。トレーナーのマルコも、親友のモーも。ボクシングこそ楽園への鍵だ。金と勝利という楽園への。彼はこの楽園に旅立つべく、
ついに立ち上がる。

●ハンドボール
●タイトル : Hand 7(ハンド7)
●作 : Celinon(セリノン)
●画 : Albert Carreres(アルベール・カレール)
●出版社 : Humanoides Associés 
●巻数 : 3 
●出版年 : 2007-2008
[あらすじ]『 ハンド7』はハンドボールを取り上げた少なくともフランスでは初のマンガ! コメディタッチだが、実はこの作品、あの『七人の侍』に着想を得ているのだ。ヒロインのニーナは、弱小ハンドボールチームのコーチの娘。
あまりの弱さにこのままではチームの存続が危うい。スカウトしようにも、ニーナの父親のもとでプレイしようという選手が見つからない。万策尽きたニーナは、他のスポーツの選手に目をつける。
例えば、ジャオはサッカー選手、カミは走り幅跳びの選手……。こうして集められた急造の傭兵チームが、チーム再建を賭け、ハンドボールに挑む!

●サーフィン
●タイトル : Patxi Babel(パトクシ・バベル)
●作 : Pierre Boisserie(ピエール・ボワスリー)
●画 : Georges Abolin(ジョルジュ・アボラン)
●出版社 : Dargaud 
●巻数 : 2 
●出版年 : 2014-2015
[あらすじ] 主人公のパトクシ・バベルはバスク地方に住む19 歳の少年。プロのサーファーになるために日々トレーニングに励んでいる。彼は一方で“普通の”若者の生活に憧れるが、父親がそれを許してくれない。
父親に反抗するために、ある晩パトクシはトレーニングを断で休み、パーティーに参加する。その晩、パトクシはローラと出会い、恋心を覚える……。だが、ふとしたことがきっかけで、それまで知らなかった父親の過去を知ることになる。
それからというもの、彼は政治とアイデンティティの問題に真っ向から向き合わなければならなくなる。そんな彼を支えてくれたのは他ならないサーフィンだった。

●セネガル相撲
●タイトル : Yékini, le roi des arènes
 (闘技場の王イエキニ)
●作 : Clément Xavier, Lisa Lugrin
 (クレマン・グザヴィエ、リザ・リュグラン)
●画 : Clément Xavier, Lisa Lugrin
 (クレマン・グザヴィエ、リザ・リュグラン)
●出版社 :Editions FLBLB 
●巻数 : 1 
●出版年 : 2014
[あらすじ] セネガル相撲はセネガルではサッカー以上の人気を誇るスポーツ。本書は“闘技場の王”という称号を戴いた3人の選手について語る。セネガル相撲が盛んな小さな島出身のイエキニは、現状のメディアや政治、財政システムの在り方が気に入らず、それらに反抗してみせる。
彼の戦いはいつまで続くのだろうか?

●相撲
●タイトル : Yokozuna(横綱)
●作 : Jérôme Hamon(ジェローム・アモン)
●画 : Marc Van Straceele(マルク・ヴァン・ストラセール)
●出版社 : Kana 
●巻数 : 2 
●出版年 : 2013
[あらすじ] 身長2 m、体重120㎏と体格こそいいが、チャドは内気で控え目な性格の若者。日本に行って力士になればと勧められるが、とてもそんなことはできそうにない。彼は相撲なんてしたこともなかったし、そもそも日本語だってひと言も話せないのだ。
それでもチャドは、いつか相撲の最高位である横綱になれたらという夢を抱き、東京へと飛び立つ……。後に曙と呼ばれ世界中で知られることになるチャド・ローウェンの半生から着想を得た描かれた友情と勇気の物語。

●オリンピック
●タイトル : Astérix aux jeux olympiques
 (オリンピックのアステリックス)
●作 : René Goscinny(ルネ・ゴシニー)
●画 : Albert Uderzo(アルベール・ユデルゾ)
●出版社 : Hachette 
●巻数 : 1 
●出版年 : 1968
[あらすじ] 古代ローマに抵抗するガリア人の戦士アステリックスとオベリックスは、オリンピックに参加するためにギリシアのオリンピアに向かう。応援団の村人たちも彼らと一緒だった。
アステリックスの力の源は魔法の薬だが、困ったことに今大会ではドーピングの取り締まりが厳しく行わる様子。このままでは魔法の薬を飲むことができない。結局、アステリックスは魔法の薬に頼らず、ガリア人の代表としてただひとり大会に参加することになる。

●オリンピック
●タイトル : Les schtroumpfs olympiques
 (オリンピックスマーフ)
●作 : Peyo(ペヨ)
●画 : Peyo(ペヨ)
●出版社 : Dupuis 
●巻数 : 1 
●出版年 : 1983
[あらすじ] 力持ちスマーフがオリンピックの開催を計画。勝利者にはスマーフェットとキスする権利が与えられることになる。それを聞いたスマーフたちは我先に力持ちスマーフの家に殺到。大会への登録を済ませる。
スマーフたちはチームに分かれる。赤組、黄組……。ところが、よわむしスマーフだけ取り残されてしまう。誰も彼とはチームを組みたくないのだ。やがて彼は自分ひとりで緑組チームを作ることになる。はてさて、勝敗の行方やいかに?

夏コミ94 国際交流コーナー 報告

コミケ93の国際交流コーナーでは、2018年6月にオランダ ハーグで開催された『Anime 2018 Queens』について特集しました。

オランダの同人誌も展示。

今回も世界中からたくさんの方々が来てくれました。

ワルシャワ国際コミックフェスティバル~ポーランドマンガの世界にダイブ

皆さん、こんにちは! 日本で海外マンガを翻訳出版しているフレデリック・トゥルモンドです。今回は僕が『AIDE 新聞』のナビゲーターを務めさせていただきます。

世界中にはコミックスやマンガをめぐるさまざまなイベントがありますが、ここ数年、その中でも大きなフェスティバルの紹介が進んでいます。
例えば、イタリアのルッカ・コミックス&ゲームズ(LuccaComics & Games)、アメリカのサンディエゴで行われるコミコン・インターナショナル(Comic-Con International)、
フランスのアングレーム国際漫画フェスティバル(Festival international dela bande dessinée d’Angoulême)とジャパンエキスポ(JapanExpo)、
アルゼンチンのコミコポリス(Comicopolis)……。規模といい、内容の豊かさといい、オリジナリティといい、どれもすばらしいフェスティバルです。

では、もう少し規模の小さいイベントはどうなのでしょう? 規模は小さいけれど、世界に誇れるイベントというものはないのでしょうか?
今回の『AIDE 新聞』では、皆さんを今まであまりなじみのない目的地、ポーランドにご招待します。今回ご紹介するのは、ワルシャワ国際コミックフェスティバル、そしてポーランドマンガの世界です。
フランスやイタリアといったヨーロッパの他の国と比べると、規模は小さいですが、ポーランドのマンガには思いがけない魅力がたくさんあります。
ぜひそれを皆さんにも
知っていただきたい。

[著者紹介:フレデリック・トゥルモンド(Frédéric Toutlemonde) ]

1978 年パリ郊外リラ生まれ。パリ第7 大学日本言語文化学科卒。学生時代にスペインとキューバを繰り返し訪問。
1999 年に初めて日本を訪れ、2003 年より日本で暮らす。2014 年までに在日フランス大使館に勤務する。2008 年にEuromanga 合同会社設立、バンド・デシネを専門にしたマンガ誌
『Euromanga』誌の出版を始める。2014 年5月にユマノイド日本支社設立、代表を務めている。2012 年から海外マンガ フェスタの実行委員会委員長を務めている。

それでは、いざポーランドへ!

まずポーランドの位置をおさらいしておきましょう。え、どこだっけ…という方、ご安心ください。
ヨーロッパには大小さまざまな国があり、ポーランドは大きな面積を誇っていますが、イギリスやドイツ、フランス、イタリアといった大国ほど知名度があるわけではないんです。
周辺国の名前をあげるとややこしくなる一方なので、できる
だけシンプルに説明してみましょう。ポーランドはドイツの東側にある大国で、大きさもドイツとほぼ同じ。
首都はワルシャワ。その人口は180万人強で、EU圏で9番目の大都市です。第二次世界大戦中に破壊され、数々の痛ましいエピソードの舞台となったワルシャワですが、
戦後見事に復興を遂げ、今日ではヨーロッパでも屈指の美しい街と
なっています。古都ワルシャワの魅力は、西欧のよく知られた観光地にも決して劣りません。
有名な作曲家フレデリック・ショパンが生まれ育った場所としても知られるこの都市は、物価も決して高くなく、公共交通機関も安定していて、安全で穏やかな印象があります。
心配性の外国人観光客にとっても居心地のいい都市だと言えるでしょう。

つまり、ワルシャワはまさに観光にうってつけな都市なのです。ちょうどしばらく前に日本との間をつなぐLOTポーランド航空の直行便も開通したばかり。
それではここから、ワルシャワ国際コミックフェスティバルとポーランドマンガについて見ていくことにしましょう。


 

 

ワルシャワ国際コミックフェスティバルへようこそ!

ワルシャワ国際コミックフェスティバル(ポーランド語ではKomiksowa Warszawa)は、中央アジア最大のマンガのフェスティバルのひとつで、ヨーロッパのマンガ編集者の間ではよく知られています。
その歴史は2010年に遡ります。その年、ポーランドのマンガ家や編集者、ファンからなるあるグループが、協力してポーランドマンガ協会を設立しました。
そして、この協会が主導する形で、年に1回ワルシャワでマンガのフェスティバルを開催することが決まったのです。ところが、2010年の第1回は波乱万丈の幕開けとなりました。
まずフェスティバルと関係の深い印刷所で火災が発生。次にアイスランドの火山が噴火し、海外ゲストの到着が大幅に遅れました。他にも不慮の事故が次々に発生……。
それでもフェスティバル事務局はこれらの試練を乗り越え、記念すべき第1回を成功させました。2013 年からは、マンガファン以外の人にも興味を持ってもらうべく、ワルシャワブックフェアとタッグを結成。
今ではフェスティバルは、同フェアの中で毎年開催されています。会場はPGE国立競技場。UEFA EURO2012 に合わせて建てられた建物です。
フェスティバルには毎年、世界中(フランス、ドイツ、アメリカ、メキシコ…)から10人ほどの作家が招待され、参加しています。規模はそれほど大きくなく、出展者数は50 組ほど。
そのほとんどがポーランドのマンガ出版社で、中には独立系の作家や海外から自国のマンガのプロモーションのためにやってきたエージェントなどもいます。
会期の4日間は、サイン会や国際的色豊かなトーク、ワークショップなど、さまざまなイベントが行われます。とてもアットホームな雰囲気で、一般の参加者も作家も編集者も交流を楽しんでいます。


 

ポーランドのマンガ市場

フェスティバルにはポーランドのマンガもあれば、アメリカン・コミックスも日本のマンガもフランスのバンド・デシネもあります。
このようにフェスティバルの中にさまざまな地域のマンガが同居していること、このことが現在のポーランドのマンガ市場をよく表しています。
ポーランドマンガ協会の会長によると、ポーランドのマンガ市場の構成比は以下のようになっているそうです。ポーランドマンガ20%、日本マンガ25%、アメリカン・コミックス30%、バンド・デシネ25%。
ポーランドのマンガ市場は今現在拡大中で、2014年以降、25%もの成長を遂げています。Kultura Gniewu 社の創立者SzymonHolcman氏によると、
現在はポーランドのマンガにとって最盛期ともいうべき時期で、新たな出版社が次々と生まれ、世界中のありとあらゆるマンガが翻訳出版されているのだとか。
マンガ関連のイベントもたくさんあり、ほぼ毎週末、ポーランド国内のいたるところでイベントが開催されています。18 年前に創立されたKulturaGniewu社は、Egmont社と並んで、ポーランドマンガのパイオニア的存在です。
2000年以降、これらの出版社を中心に、無数の小出版社が登場するようになったのです。

「マンガは“当たり前”のジャンルになった」

「最初のうちはポーランドマンガの読者コミュニティはごく小さなもので、書店もマンガを売りたがりませんでした。
しかし、3 ~ 4年前からメディアで話題になるようになり、“当たり前”のジャンルになったんです」とSzymon Holcman 氏は考えます。
Kultura Gniewu社はフランス=ベルギーのバンド・デシネの翻訳を主に刊行する出版社ですが、最初からポーランドの作家たちも扱っていて、今ではカタログの半分をポーランド人作家たちが占めるまでになりました。
「私にとっては、母国の作家たちの作品を出版することはとても重要なことなんです。児童マンガの分野では、ポーランドのマンガのほうが海外の作品より売り上げがいいんですよ」。
とはいえ、フェスティバル会場を歩いていると、ヨーロッパではすっかりおなじみのジェネレーションギャップの存在に目が留まります。
大人や子供はフランス=ベルギーのバンド・デシネやポーランドマンガに集まっているのですが、若者たちはアメリカン・コミックスや日本のマンガにしか興味がないようなのです。
ポーランドのマンガ市場は、一見急成長を遂げている新しい市場のように見えますが、必ずしもそうではありません。実は100年以上の歴史を誇る古い市場で、それが今大きく発展しようとしているところなのです。

ポーランドマンガの100 年!

ポーランドマンガは、1918年12月にとある新聞に掲載された『Ogniem i mieczem(火と剣と)』という新聞マンガから始まると言われています。
第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の自由を謳歌していたその時代、マンガはさまざまな新聞上に広がっていくことになります。その当時、ポーランドマンガの読者は、新聞の購読者でもある大人の一般大衆でした。
しかし、その後、海外マンガが入ってくることで状況が変わっていきます。
ちょうどその頃、『ローレル&ハーディ』、『プリンス・ヴァリアント』、『ターザン』、『ミッキーマウス』といったよく知られたコミックスが翻訳されるようになりました。
もともとは新聞に慎ましく掲載されていただけだったポーランドマンガは、やがて若い読者の人気を獲得し、1930年代にはポーランドマンガの雑誌や単行本がたくさん刊行されるまでになります。
この時期のポーランドマンガで有名なのは、KornelMakuszynski 作、Marian Walentynowicz 画で1933年に刊行された『Kozlotek Matolek』です。
ちょっとマヌケでおひとよしな雄ヤギの冒険を描いた作品で、全身真っ白な毛に覆われ、赤いショートパンツを履いている姿は、ポーランドの国旗を想起させます。
主人公のヤギは、子供たちが大好きで、徴兵されポーランド軍で働いたり、世界中を旅したり、祖国を憂えたりしますが、最後には必ず自分の住まいである家畜小屋に戻ります。
この作品は今なお大人気で、ポーランドの児童文学の古典のひとつと見なされています。


 

共産主義時代のポーランドマンガ

残念ながら、このポーランドマンガの最初の黄金時代は、第二次世界大戦とともに終わりを告げてしまいます。
1939年、ドイツに占領されると、マンガ産業は突如として停止し、再開されたのは終戦後になってからのことでした。
1945年から48年の間には出版社がいくつか復活し、両大戦間に刊行されていた人気作品を再び世に問うようになります。
しかし、第二次世界大戦後の共産主義新体制は、マンガを西側のポップカルチャーが生み出した悪徳と見なし、好意的にはとらえてくれませんでした。
そのため、せっかく再版された古い作品も、多くは1947年から1957年の間に発禁処分となってしまいます。
スターリンの死後、こうした発禁処分が解け、ようやくポーランドマンガは再び活気を帯び始めました。
その中核を担ったのは子供向けマンガで、マンガは、例えばボーイスカウトの雑誌に掲載されたりしたのです。
マンガはたちまち人気を博しますが、そこに目をつけたのがソ連でした。
プロパガンダの格好の機会と見なされ、親ソ連的なマンガが子供向けの雑誌に氾濫することになります。
このプロパガンダ期を代表する作品のひとつが『Kapitan Zbik(ズビック隊長)』です。
主人公はイケメンでインテリ、なおかつ公正な軍人で、ありとあらゆる格闘技の達人で、絶えず犯罪者と戦っています。
このシリーズは、若者たちに対して軍隊のイメージを刷新し、精鋭部隊が栄光で包まれたものだと思い込ませることを目的に作られたものでした。
若者たちもズビック隊長と同じように当局や法律に貢献すべし、というわけです。
このカリスマ的なキャラクターの生みの親は、民兵団司令部の広報部隊長Zladyslaw Krupkaでした。
ズビック隊長の冒険は、1967年に始まり、1982年まで続きます。
時が経つにつれ人気は拡大し、累計販売部数は1150万部にものぼっているそうです。今日でもズビック隊長の冒険は、ポーランドのキオスクで手に入れることができます。
特に当時をなつかしく思い出す年配の読者の間で、このキャラクターは今なお人気を誇っているのです。

ポーランドのジェームズ・ボンド

同種のプロパガンダマンガで人気を誇っていたシリーズがもうひとつあります。
1971年から73年にかけて出版されていた『Kapitan Kloss(クロス隊長)』です。
このシリーズは、第二次世界大戦を背景にあるポーランド人スパイがドイツ軍と戦う姿を描いています。
イケメンでインテリ、しかもプレイボーイであるクロス隊長は、ソ連の諜報機関で働くポーランド版ジェームズ・ボンドとでもいうべき存在です。
彼は第三帝国の内部に潜入し、絶体絶命のピンチを切り抜けます。
占領者であるソ連のために働くという意味で、常に論争の的になってきたキャラクターではありますが、クロス隊長は今でも、ポーランドのマンガの中で最も人気の高いキャラクターのひとりだと言っていいでしょう。

大衆的な子供向けマンガ

しかし、子供向けの雑誌や新聞に掲載されていたマンガがすべてプロパガンダ的な性格を持っていたわけでも、『ズビック隊長』や『クロス隊長』のようにリアルなスタイルで描かれていたわけでもありません。
あまり政治的でないマンガもかなりありましたし、その中にはヒット作もあったのです。
中でも、『Tytus, Romek i A’Tomek』と『Kajko & Kokosz』の2作は、未だにポーランドで大人気の作品です。
Henryk Jerzy Chmielewski(ペンネーム:Papcio Chmiel)による『Tytus, Romek iA’Tomek』は、親ソ連時代のポーランドを舞台に、人語を解すチンパンジーのTytusと彼の友人であるボーイスカウトの2人の少年の日常と冒険をユーモラスに描いた作品です。
このシリーズのテーマは、ボーイスカウト運動や交通事故防止対策、宇宙の知識など、教育的・道徳的なものです。
1957年にある雑誌で連載が始まり、1966年からは単行本の形でも刊行されるようになりました。
本シリーズはまた、年に一度、定期的に単行本が刊行されるようになった最初のポーランドの本でもあります。
その後テレビ向けにアニメ化もされました。もうひとつポーランドの子供向けマンガの象徴とも言うべき作品が、Janusw Christa の『Kajko &Kokosz』です。
この作者は、既に1958年から『Kajteki Koko』という作品をある雑誌に連載し、人気を博していました。主人公は、頭がよくて背が低い人物とちょっとマヌケでぽっちゃりしている人物の2 人組。
『Kajko& Kokosz』は、『Kajtek i Koko』を中世世界に移し替えた作品です。主人公のKajkoとKokoszの2人は、自分たちの村が近隣の強力な村から襲われるのを守り、その後もさまざまな冒険を積み重ねていきます。
このマンガは、物語のコンセプトにおいてもビジュアル面においても、フランスで最も有名なバンド・デシネ『アステリックス』を想起させます。
『アステリックス』でも主人公たちの住むガリア人の村がユリウス・カエサル率いるローマ帝国に襲われ、主人公たちがそれを守るのです。
違いがあるとすれば、『アステリックス』の舞台は史実に基づいた古代であるのに対し、『Kajko & Kokosz』の舞台は空想上の中世であるという点でしょう。
もっとも空想とは言いながら、その村は明らかに中世のポーランドをモデルにしているようで、スラブ人の勇敢な戦士たちがたくさん住んでいます。
一方、敵はと言えば、甲冑や兜から判断するに、近隣に住んでいたゲルマン人でしょう。
しかし、この作品が発表された当時、ゲルマン人の国家ドイツは東西に分かれていて、東ドイツは、ポーランドに強い影響力を持つソ連とも関係の深い友好国でした。
この作品が空想的な世界観を備え、そこに存在する民族や主人公たちの名前が現実と一致しないのは、過去の出来事との関連をあまりあからさまにせずに、隣国ドイツが抱えていた微妙な問題に下手に触らないようにするためだったのでしょう。
本シリーズは1972年から1990年にかけて刊行され、累計13巻で700万部以上の売り上げを誇っています。
現在でも小学校の必読書に指定されているそうで、どの書店にも並べられています。プロパガンダの要素がないこともあって、今日でも人気の作品です。


 

秘かに読まれた海外マンガ

親ソ連時代のポーランドマンガは、基本的にリアルなプロパガンダマンガか子供向けマンガに限られていました。
当時、検閲が存在していたのですが、そのため幻想的なマンガやSFが発展し、1970 年代末にはSF がポーランドマンガで最も人気のあるジャンルになります。
1982 年に創刊された『Relax』や『Alfa』、『Fantastyka』といった雑誌は、当時たいへんな人気を誇っていました。
掲載作品は、主に歴史もの、犯罪もの、SFで、ポーランドの作家だけでなく、チェコやハンガリーの作家も執筆していました。
検閲だけではありません。当時は、海外のコミックスを輸入したり、翻訳出版したりすることも禁じられていていました。
おまけに紙質が悪かったこともあり、マンガファンや作家たちは不満を抱く一方でした。
新しい世界を冒険する欲にとりつかれた彼らは、少しずつ海外のマンガ、とりわけアメリカン・コミックスとフランス語圏のバンド・デシネに対する関心を募らせていきます。
彼らは海外に四散した同胞たちを通じて、不法に海外マンガを輸入し、それらを闇取引で入手するまでになりました。
こうして何人ものポーランド人作家たちが、海外マンガの影響を受け、アメリカン・コミックスやバンド・デシネに近いスタイルを獲得するようになったのです。

海外マンガ解禁

1989年、共産主義体制が崩壊すると、突如として海外文化が解禁になりました。
もはや国家による検閲はなくなり、需要が供給を決定づけることになります。続く数年、ポーランドのあらゆる出版社が海外コミックスに殺到します。
両大戦間にはポーランドにも存在していたアメリカのスーパーヒーローが久しぶりに復帰を遂げました。子供たちのもとにはミッキーの雑誌が何種類も届くようになります。
しかし、この海外マンガブームは長続きしませんでした。というのも、他にもテレビドラマに映画、ビデオゲームなど、さまざまな娯楽がポーランドに入ってきたからです。
こうした他のコンテンツとの競合に苦しみ、やがてポーランドマンガに興味を持つ人の数は共産主義時代と同じ程度になり、あまり売れなくなってしまいます。
多くのマンガ出版社が少しずつ姿を消していき、作家たちが作品を発表できる機会といえば、フェスティバルだけ。ポーランドのマンガ産業が再出発を果たすには、1990年代の後半を待たなければなりませんでした。
ちょうどその頃、週刊の『ドナルドダック』誌が大ヒット(毎号20万部)したこともあり、Egmont社が海外マンガの雑誌を創刊し、さらには日本マンガを翻訳出版に乗り出します。他にも、JPFやYatta、Wanekoといった日本マンガに特化した小出版社が現れ始めました。
やがて新しい出版社が次々と誕生し、世界中のあらゆる地域のあらゆるジャンルのマンガが翻訳されるようになりました。
市場が再生することで、読者も新しくなりました。
親ソ連時代の一番いい時に比べれば、まだ小さな市場かもしれませんが、読者は好奇心旺盛で、世界に対して開かれています。
2000年代初頭以来、ポーランドのマンガ市場は、今までの遅れを取り戻そうとするかのように、アメリカン・コミックスでもフランス語圏のバンド・デシネでも日本のマンガでも、翻訳して出版しようという熱に浮かされています。

ポーランドにおける日本マンガ

ポーランドにおける日本マンガは、他の多くの国と同じような経過を辿ってきました。
インターネットが飛躍的に発展し、日本のアニメに簡単にアクセスできるようになって今に至ります。
現在ではポーランドにも日本のマンガ・アニメの若いファンがたくさんいます。特に人気があるのは、もちろん少年マンガ。大手出版社のヒット作は軒並みポーランド語に訳されています。
日本のマンガが販売されているのは、主に(日本関連の書籍を扱う)専門書店とイベント(日本のマンガ・アニメのフェスティバルやコンベンション)会場。
たいがいどの大都市にもこの手のお店やイベントがあって、一般書店にマンガが置かれていない状況を補っています。そもそも一般書店には、『Kajko & Kokosz』などの古典を除けば、ポーランドのマンガもほとんど置かれていません。
ですが、他のヨーロッパの国々と同じように、日本マンガに夢中になった世代の新しい作家たちがいて、彼ら彼女らは、日本マンガのスタイルでオリジナル作品を創作しています。
これらのマンガ的な作品の中で特に人気のあるジャンルはファンタジーです。とはいえ、ファンタジー人気は必ずしも日本マンガ的な作品に限った話ではありません。
世界的に有名なゲーム『ウィッチャー』が、その証拠でしょう。同人サークルの数はあまり多くなく、十数組くらいしか見当たりませんが、それに比べると、ひとりで同人誌やオリジナルマンガを制作している作家の数はかなり多い印象があります。
これらのマンガ家たちは、多くの場合、作品をインターネット上で公開していますが、一部、自費出版をしている人たちもいます。
ポーランドのあちこちで行われているマンガ・アニメのコンベンションに行けば、そうしたものにすぐに目にかかることができるでしょう。
最近では、ポーランドのマンガ出版社からオリジナル作品を発表する日本人マンガ家も登場し始めました。
特筆すべきはKattlettと吉川慶子で、どちらもポーランド在住の日本人作家です。
吉川さんは、チェコ共和国でアニメーションを学んだ後、2013年にポーランドにやってきました。
現在はポーランドのYatta社からマンガを出版すると一方で、ワルシャワのアニメーションスタジオでも働いています。
彼女のマンガは、日常生活やポーランドと日本の文化の違いを扱っていて、特に食べ物の話が中心になっています。
ポーランドで日本的なマンガを刊行する出版社はまだまだ数も少なく、規模も大きくありません。
作家の生活を十分にサポートできているとは言えませんが、それでも一部のポーランドマンガ家の中にははっきりと上達の跡が認められます。
ヨーロッパの他の国にも共通して言えることですが、日本のマンガは大人気なのです。


 

 

ポーランドの新しいマンガの多様性

これらの日本マンガスタイルで描く若い作家たちとは別に、その他の海外マンガで育った新しい世代の作家たちもいます。
彼らはそれらの海外マンガに影響を受けながら、それらとは一線を画すような仕事をしようと日々努力しています。
この世代の作家たちは、子供向けのマンガ、ユーモアマンガ、風刺マンガ、グラフィックノベルと、実に多様なジャンルで自分だけのスタイルを模索し、自分なりのグラフィックアイデンティティを確立しようとしています。
ここ数年の成功例としては、特にTomaszLew LeśniakとRafał Skarżyckiの『Jeż Jerzy』をあげることができます。
ラッパー兼スケートボーダーのハリネズミJerzyの冒険を描いた、現代のポーランドを反映した作品です。
この作品からは、社会からはみ出した現代のポーランドの若者の姿が浮かび上がってきます。
こうした現代社会に対する辛辣な風刺とはずいぶん趣を異にしますが、Tomasz Samojlikの子供向けマンガ『Ryjowka Przeznaczenia』は、ポーランドの田舎を舞台に繰り広げられる小さな齧歯類の冒険を魅力たっぷりに描いています。
この作品は現在アニメ化され、大ヒット中です。
既に触れたポーランドマンガの古典『Kajko& Kokosz』も、現在は新しい作家に引き継がれ、相変わらずの人気を誇っています。
最後に付け加えると、マンガは徐々に、若い世代に歴史や国家遺産を説明するための教育的な道具として、ポーランドの教育機関でも使われるようにもなってきています。
マンガとその描き手であるマンガ家たちは、長らくあらゆるメディアから不当に評価されてきましたが、徐々に取り上げられる回数も増えてきて、その評価も変わりつつあります。
たしかに現代のポーランドマンガの発行部数は、共産主義時代の最盛期と比べて決してまだ多くありませんし、マンガだけで食べていける作家もほとんどいないのですが、それでも状況はよくなりつつあることが確認できます。
ポーランドのマンガが、発展のただなかで、海外マンガに開かれ、ジャンルが多様化しつつあることは、疑いの余地がありません。成長はまだまだ続くことでしょう。
今後のさらなる発展に期待しましょう。


 

 

冬コミ93 国際交流コーナー 報告

コミケ93の国際交流コーナーでは、2017年11月にイタリア ルッカで開催された『LUCCA COMICS & GAMES HEROS 2017』について特集しました。

2017年、今回のテーマは「HEROS」でした。
イタリア トスカーナ州の城塞都市ルッカで行われるこのイベントは、1967年から続くヨーロッパ最古のコミックコンベンション!


 

今回も世界中からたくさんの方々が来てくれました。