3.各種業界からの報告
A 出版界の現状
西谷隆行
日本書籍出版協会・出版の自由と責任に関する委員会委員
私のほうからは、出版業界の自主規制・書店やコンビニでの取り組みについて、図書規制に絞ってご報告をし、今以上の規制は必要ないということを強く申し上げます。
現在の都青少年健全育成条例が制定されたのは1964年、東京オリンピックの年です。その当時から図書類の販売規制が設けられており、出版業界は東京都とも一定の信頼関係を築きながら50年ちかく自主規制に取り組んでまいりました。そこには当然のことながらマンガやコミックも含まれております。特に近年の自主規制の取り組みにより、不健全図書の指定数は激減しています。
東京都では、いわゆる不健全図書を指定するにあたり、購入した雑誌や書籍・コミックから候補誌を絞り、事前に諮問候補図書類に関する打ち合わせ会を開催します。この会は日本書籍出版協会・日本雑誌協会・出版倫理懇話会等の出版社の団体、それに書店さんやコンビニエンスストアの団体、および取次店などの流通関係団体からの委員によって構成されています。そこでの意見をふまえ、青少年健全育成審議会に図って指定するという手続きをふみます。
東京都が審査のために事前に購入する図書は、書店やコンビニで区分陳列されていないものから選んで、毎月150冊前後。その中から不健全図書が指定されます。今から8年以上前には毎月10誌〜13誌が不健全指定されていました。それが、出版業界の自主規制の取り組みにより、現在では毎月2〜3誌ほどの指定に激減している状況です。
指定された場合、帯紙措置というのがありまして、東京都で連続3回、あるいは年に5回不健全図書に指定された場合、当該の雑誌は18歳未満への販売を禁止する旨を記載した帯紙
を付けなければ販売できません。これは1965年からおこなっており、帯紙措置となった雑誌はほとんど廃刊となります。
また、91年には成年コミックマーク、96年には黄色い成年向け雑誌マークを作り、150誌以上につけて区分販売しております。これに加え、2001年には業界として出版ゾーニング委員会を立ち上げ、独自に審議をし、区分陳列が必要と思われる出版物に赤い18禁のマークの表示要請をおこなっています。
さらに加えて、2004年からはマーク表示するほどきつい内容ではないがグレーゾーンの出版物を、中が見れないよう半透明の青いシールで小口を止め、区分陳列販売するという方法も採
用しています。毎月220誌2千万部について、2ヶ所のシール止めは手作業でおこなっており、数百円の雑誌に対して非常に高いコストをかけて取り組んでいるのが実情です。
成年マークや18禁マークが表示されたもの・あるいはシール止めされたものは、区分陳列されて販売されており、これは東京都の審査対象とはされていません。また、成年マークがつい
た出版物はコンビニでは扱わず、書店のみの扱いです。これらの取り組みによって、東京都で不健全指定される出版物は、劇的に減りました。
次に、過激な内容が増えて野放しになっている状況というのが、現実にあるのかどうか。
東京都青少年問題協議会の答申でも、指定を受ける出版元が限られてきていると述べられており、これは、現行条例の運用・個別の指導・現在の自主規制の取り組みの徹底で十分対応できることを物語っています。現在、雑誌や図書類が、以前に比べて過激化し野放しになっている状況などはありません。
今回噴出したさまざまな疑問に対しての、東京都の回答には納得しがたいものがあります。一つは販売規制であって表現規制ではないという言い方。みなさん、現実問題として販売規制のあるものを作りますか?二つめは東京都の条例であって全国を対象にしたものではないという言い方。出版社のほとんどは東京に存在します。東京都の動向は全国に影響があります。
以上、今回の改正が実施されれば、表現上多大な萎縮効果を生むことは明白であります。このような規制には断固反対いたします。
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