タイにおけるマンガ/アニメーション事情と イベント報告
梶原賢二
まずタイの事情を大まかに説明すると、マンガとアニメーションは、日本の作品が大量に入って来ています。 マンガについては、日本で人気のある作品は発売から1年位で「コピーライト」と言われる、日本の雑誌社からライセンスを受け、タイで印刷された物が発売されます。少年少女マンガは数多く発売されていますが、日本でいう青年誌関係の作品は少ないですね。大体1冊30バーツ(約90円)前後ですが、タイでは1食分の金額に値しますので、感覚的には高めなのだろうと思います。1冊購入したら、数人で回し読みなどをするのが現実です。 アニメーションは、日本でのTV放映から2年位時間が経ったものが放映されています。いわゆる地上波的なTV局が5社程あるようで、全ての局ではありませんが、平日は夕方4〜7時、土曜日と日曜日は朝の時間帯にアニメーションが放映されています。しかし、タイではテレビの普及率はそれ程高くありません。余裕のある人は、衛星TVかCATVに加入すると、アニメーション専門チャンネルを見ることができます。 またDVDやCDソフトは、日本発売から数ヶ月でタイの市場に出回ります。DVDが1枚200〜600バーツ(約550〜1600円)程の値段で売られていますが、実はこれは違法コピーなのです。オリジナルは1枚2000バーツ(約5500円)を越えるので、余程のお金持ちでないと購入できません。コピー物でも、常時購入できる人はほんの一部でしょう。現在のタイでは、当人の財政次第で情報を得る時間も短縮可能な状況ではありますが、そのような人は、本当にわずかだと思います。 そんな中でも、タイにおいてもアニメーションの熱気は徐々に育って来ているようです。コミケットに似たマンガフェスティバルが開催されるようになり、イベントの規模はまだ小さいものですが、向かっている方向性は日本とよく似ています。 このようなイベントは、大規模なものが年2回有るそうですが、一つはタイで日本マンガのコピーライトを販売している雑誌社−Vibulkij(ウィブンキット)という、タイのマンガ出版関連では一番大きな企業−が主催する「ウィブンキット・コミック・パーティ」で、今年で確か5回目だったと思います。私が所属する会社でも昨年から参加しています。 もう一つは、タイでアニメーション制作スタジオを運営しているSilpoton Manga Art Center(シントーン マンガ アート センター)という会社が主催しており、他に小規模なイベントも増えているようです。 上記二つのイベントは、デパートの催事場にあたる場所を会場に行っているので、限られたファンだけではなく、一般のお客さんも来場します。この辺りが日本とは大きく違うところでしょうか。独立するほどのマーケットが、まだまだ形成されてないということなのでしょうが、収入を親からのお小遣い等でやりくりする学生目当ての市場は、とても小さい状態です。 しかし、イベント来場者は年々確実に増え続けて来ています。昨年あたりからだと思いますが、マンガに関するイベントは、特に集客力が高いということで、TV局が取材に来るようになりました。まだマンガやアニメーションの世界が一般に理解されていないタイの社会では「何故こんなにマンガに若者が集まるのか解らない」という意味で、注目されているようです。 こうしたタイのフェスティバルは、一応日本のコミックマーケットを研究して行われているようです。先に書いたVibulkij社の社長は、版権の交渉等で日本によく行っており、ついでにコミケも見学しているようです。私と話した時に日本のマンガやアニメーション、そしてコミケについて熱く語っていました。この方はまだ歳も若く、この先に何をやりだすかとても楽しみです。この社長をはじめ、タイにおいてもマンガやアニメーションを熱く語る人が、今かなりいることに驚かされます。
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